例えサッカー選手でも、下半身だけで競技を行っているわけではなく、上半身をどう使うか(筋力等も含め)はパフォーマンス向上を考えたうえで重要な要素です。
上半身、と考えた時に「腕」をイメージする人は多いと思います。
ではその「腕」はどこからが腕なのでしょうか?
人間を簡易的に表現すると、このような書き方をする人、
あるいは、
上のような表現をする人(僕も含めて)がいますが、これらのイメージは正しいでしょうか?
考えてみましょう。
上肢と上肢帯
棒人間のイメージだと、「腕は肩から生えている」ように思われます。
実際に、「腕を回してください」といえば多くの人が肩関節を中心にをぐるぐる回しますし、そういう人は個人のの感覚としても肩関節を中心に回している感覚があるでしょう。
しかし、本当に腕は肩関節より先の部分で、腕の動きが始まるのは肩関節でしょうか?
上肢
腕は、解剖学的に上肢と呼びます。
この上肢は、上腕骨より遠位の部分です。
多くの人がイメージする腕ですね。
ただ、上肢だけだと肩関節を構成することがきず、腕を動かしたくても動かすことができません。
そのための肩関節を、上腕骨と構成しているのが肩甲骨です。
上記の図を見てもらえればわかるように、上腕骨と肩関節を構成しています。
つまり、肩甲骨と上腕骨がなすこの肩関節(正式には肩甲上腕関節)が関節として機能することで、上肢を多方向へ動かすことができるのです。
また、肩甲骨は、胸郭場をスライドするように様々な方向へ動かすことができます。
肩甲骨それ自身も動かすことができるということです。
腕を動かすときは肩関節が動くのはもちろんですが、より体の中心から動くのは肩甲骨です。
動きの意識を肩関節に置くか、肩甲骨に置くかで動きが大きく変わることを感じることができるでしょう。
つまり、「腕」を考えるときは、上肢と肩甲骨を合わせた部分と考えるのが良いでしょう
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となるのは少し気が早いです。
肩甲骨の関しては多くの人が話題に挙げ、肩甲骨を動かしましょう、肩甲骨ストレッチを~、肩甲骨はがし~、などで注目されることが多いです。
そういうこともあり、肩甲骨から腕を動かしましょう、という言葉が多く聞かれますが、忘れてはいけない、肩甲骨を体幹部と接合する骨があります。
鎖骨です。
上肢帯
鎖骨は、肩甲骨と肩鎖関節で強く繋がれています。
その逆側は、胸鎖関節と呼ばれ、胸骨と関節をなしています。
この胸鎖関節は、構造的に球関節(肩関節のようにぐるぐる回ることができる関節)の働きをするため、様々な方向への動きに対応できます。
腕を回すときに、胸鎖関節を中心に回すイメージで行ってみてください。
それだけで、腕の動きが大きくなることが感じられると思います。
また、自分で胸鎖関節の周りをほぐしてみたり、他人に撫でてもらうだけでも(触覚入力)変化が感じられるのではないでしょうか?
上肢に加え、肩甲骨と鎖骨を合わせた部分を上肢帯と呼びます。
腕は、骨格レベルで考えた時、上肢帯をイメージするのか、上肢や肩関節だけイメージするのかで、動きそのものが変わったり、トレーニングのプログラムにも影響を与える可能性があります。
なんとなく、「腕」と考えていた部分が、思っていたより体の中心から構成されていたことに驚く人も多いのではないでしょうか。
筋肉から見ると
骨格レベルで考えると、上肢帯は多数の筋によって体幹部と繋がっています。
そんな中でも、広背筋は、上肢を骨盤と繋いでいます。
懸垂やベントオーバーロウといったストレングストレーニングの種目は上肢帯を動かすことで広背筋の筋力強化を図りますが、それはこの筋が上記のように骨盤と上腕骨をつないでいるためです。
そうすると、筋レベルでは、上肢帯は骨盤とも繋がっていると考えることができます。
広背筋が上司に繋がっていることを知っていれば、あるいは感じ取れていれば、背中で上肢の動きや出力をコントロールできることも気づくことができるでしょう。
まとめ
腕を上肢ではなく上肢帯で考える、といった書き方をしましたが、肩甲骨の動きは胸郭の動きや脊柱の動きにも影響を受けます。
その胸郭や脊柱は~、と考えていくと、全身が単独の部品の集まりではなく、大きな一つのものであることがわかってきます。
普段なんとなく腕と考えてる部分をより深く考えるだけで、例えばストレングストレーニングの際に、「ベンチプレス?腕立て伏せ?どっちを選択する?」「懸垂は何を意識する?」といったことに繋がりますし、競技動作でも、例えば「キック動作の上半身の動き」などを考える上で、大きな違いが生まれます。
今回は、腕をテーマにしましたが、「脚はどこから?」となったらどうでしょうか?
ぜひ、考えてみてください。