Matsu Sports Training

体育系大学卒のPT学生。関東大学サッカーチームでトレーナー。スポーツやトレーニング、身体について書いていきたいと思います。

#33 グランドでできるサッカー選手の内転筋の肉離れ・傷害予防「コペンハーゲンアダクションエクササイズ」

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ハムストリングの肉離れはサッカーで好発する傷害であるため、それをいかに予防するか、というのは多くのチーム、選手の課題だと思います。

 

そのためのエクササイズとしてFIFA11+にも含まれているノルディックハムストリングは有名です。

ノルディックハムストリングはハムストリングに遠心性収縮(エキセントリック)で高い負荷をかけることができ、なおかつグランドでもできる、というところがメリットで、ハムストリングの肉離れの予防に貢献する可能性が高いです。

 

しかし、実際に発生する筋肉系の傷害はハムストリングの傷害だけではありません。

サッカーでは、内転筋群の肉離れや股関節痛も好発します。

 

では、内転筋の肉離れもハムストリングのように予防エクササイズがあるのでしょうか。

そこで今回は「コペンハーゲンアダクションエクササイズ」に関して書いていきます。

 

 

 コペンハーゲンアダクションエクササイズ(Copenhagen Adduction Exercise)

コペンハーゲンアダクションエクササイズ(以下、CAE)は、内転筋群に遠心性(エキセントリック)の負荷をかけることができるエクササイズです。

ノルディックハムストリング同様、2人組で行うことでグランドでもすぐに行うことができます。 

 


Copenhagen Adduction Exercise

www.youtube.com

英語ですが2つ目の動画の方がわかりやすいかもしれません↑

 

ポイントとして、

「上になっている脚(動画での左脚)の内転筋群に負荷をかけるために骨盤から上下運動を行う」

ことが挙げられます。

そうすることで内転筋群に十分なストレッチがかかり、遠心性の負荷をかけることができます。

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遠心性の負荷をかけるために、可能な限り大きな可動域をとって行うことをお勧めします。

小さな範囲でちょこちょこ動いているのは、傷害予防として考えた時にもったいないです。

 

CAEのアレンジ(アイソメトリック収縮バージョン)

仮に体幹部を動かさずに下の脚(動画の右脚を)だけを上下動させると、上の脚にかかるのは等尺性収縮(アイソメトリック)での負荷になります。

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ここではこのアレンジエクササイズをアイソメトリック・コペンハーゲンアダクションエクササイズ(以下、ICAE)とします。

 

CAEは支えられている脚の内転筋群に遠心性の負荷をかけるエクササイズであることを考えると、ICAEは本来の効果とズレが出ると感じますが、例えば

  • CAEの負荷がその人にとって高すぎる場合
  • 片側を支持して、対側を動かすことで支持側に動きの制動の負荷を加える

などの目的ならありだなと考えています。

 

特に2つ目の目的に対して行うのであれば、

下の脚を前後方向へスイングするのも一つのバリエーションです。

これはここではSwing ICAEとします。

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Swing ICAEの場合、

支持脚は、身体に対して左右方向だけでなく、前後方向の動きも等尺性(アイソメトリック)あるいは遠心性(エキセントリック)の収縮で制動する必要があります。

この時の前後方向の動きは、スイングしている脚や骨盤の回旋(脚のスイングに伴う)です。

 

これはバリエーションの一つですが、実際サッカー選手では、実際に蹴っている脚とは逆の股関節や内転筋群の慢性障害が発生する場合があるので、それに対する予防という意味ではいいエクササイズになると考えています。

 

ちなみに、CAEでは体幹部から上下動させるために上の脚を少し角度をつけた状態で支持してもらう必要がありますが、ICAEの場合その必要がないため水平近くで固定できるといいですね。

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傷害予防効果は?

さて、肝心の傷害予防効果はどうでしょうか。

 

サッカーで傷害予防といえば冒頭にも触れたFIFA11+が思い浮かびますが、FIFA11+には、実は股関節内転金に対して、特に遠心性筋力に対してのエクササイズが含まれていません。

 

これに対してCAEを入れてみたらどうなんだ?という検証しています(1)

結果としてはまあ当然といえばそうなんですが、CAEを導入した群は股関節内転の遠心性筋力が有意に増加したようです。

同様にCAEをサッカー選手に8週間行わせた研究でも遠心性の股関節内転筋力が有意にに増加したと報告されています(2)

 

注意したいのは、これら研究自体は、CAEをやっていたら股関節内転の遠心性筋力が向上したよ、としかいえないので、実際はこれだけで

「CAEは傷害予防に効果的だ!」とは言い切れないなということです。

 

しかし、股関節内転の筋力が低いことが股関節周囲の傷害のリスク要因となる(3)ことを考えると、個人的にはアプローチの一つとしてCAEは効果的だと考えています。

もちろん他のエクササイズでもいいのですが、

「ウォーミングアップの一つとしてグランドで簡単にできる」という利点を考えると非常に効果的だと思っています。

 

また、この研究はCAEを検討したものなので、ICAEに関しては検証されていません。

個人的には、下の脚をスイングするSwing ICAEも並行して行うことでより傷害予防の効果があると考えていますが、どうでしょうか。

 

まとめ

ハムストリングの肉離れも防がなければならない傷害ですが、内転筋の損傷はサッカーで好発しますし、軽度のものを含まればハムストリングの傷害よりも多い印象です。

 

もちろんこのエクササイズは一つの手段であり、エクササイズの選択は他にもできますし、またアプローチの仕方は遠心性筋力だけではないのでこれが正解だと考えるのは危険です。

しかし、内転筋・股関節の傷害予防エクササイズとしてのメリットは多いと思いますし、実際チームで行っていて内転筋群の傷害は減っていることを考えると一つの手段として選択肢に入れるのは悪くないともいます。

 

ぜひ一度やってみてください。

 

参考

  1. Haroy J, Thorborg K, Serner A, et al. Including the Copenhagen adduction exercise in the FIFA 11+ provides missing eccentric hip adduction strength effect in male soccer players: a randomized controlled trial. Am J Sports Med. 2017;45(13):3052–9.
  2. Ishøi L, Sorensen CN, Kaae NM, Jorgensen LB, Holmich P, Serner A. Large eccentric strength increase using the Copenhagen Adduction exercise in football: A randomized controlled trial. Scandinavian journal of medicine & science in sports. 2015.
  3. Engebretsen AH, Myklebust G, Holme I, Engebretsen L, Bahr R. Intrinsic risk factors for groin injuries among male soccer players: a prospective cohort study. The American journal of sports medicine. 2010;38(10):2051-2057.