#65 スポーツに活かすハムストリングのトレーニング

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今回はハムストリングに関してです。

走る、跳ぶといったパフォーマンスにはハムストリングの活動が欠かせません。

トップレベルのアスリートの多くは目で見てわかるほど強靭なハムストリングを備えています。

 

この記事では
スポーツに活かすハムストリングのトレーニングの考え方の基本を紹介します。

 

 

 

ハムストリングは膝関節を屈曲させ股関節伸展させる

ハムストリングは膝関節を曲げる(屈曲)させる働きが有名ですが、股関節をまたぐ二関節筋でもあるため、股関節を伸ばす(伸展)させる働きもあります。

 

ハムストリングのトレーニングエクササイズとして最も有名であると思われるのはレッグカールですが、これはハムストリングの膝関節屈曲という働きを持ってハムストリングを活動させ筋力の強化を狙うものです。

 

しかし以前の記事にも書いたように、ハムストリングは主に3つの筋で構成され(半膜様筋、半腱様筋、大腿二頭筋)、膝関節屈曲とともに股関節伸展の働きもあることから、トレーニングの仕方によってそのトレーニング効果は大きく変わります。

#22 ハムストリングのトレーニングを股関節伸展で考えるか膝関節屈曲で考えるか① - Sports Training Room

#23 ハムストリングのトレーニングを股関節伸展で考えるか膝関節屈曲で考えるか② - Sports Training Room

 

股関節伸展によってハムストリングを強化するエクササイズの一つとして、ルーマニアンデッドリフトがあります。

 

これは股関節伸展をメインにしながら、さらにハムストリングをエキセントリック収縮させることができる超優秀なエクササイズで、多くのスポーツ選手のウェイトトレーニングで導入できると考えています。

 

 

スプリントやジャンプといったパフォーマンスでは、膝関節の角度をできるだけ変化させず、股関節伸展の力を大きく使えることが高いパフォーマンスに繋がることを考えると、ハムストリングにおいても股関節伸展という働きに特に重点を置くことが良いと考えられます。

 

もちろんスプリント動作では、遊脚後期に下腿(脚の膝より下)が前方に降り出される形になり、このときにハムストリングの強いエキセントリック収縮が求められることから、膝関節屈曲でハムストリングを鍛えることが無駄であるとは言えませんが、それはあくまで補強と捉え、股関節伸展をメインに考えるのがいいでしょう。

 

 

どの角度でハムストリングを使えばいいのか?

ハムストリングが膝関節屈曲・股関節伸展の役割があり、特に股関節伸展が重要である可能性を書きました。

 

次に問題はどの範囲・角度で股関節伸展をメインにしたハムストリングの強化をすればいいか、ということです。

 

例えばルーマニアンデッドリフトでは、写真のように上半身を前傾させた位置で最もハムストリングが活動します。

ここから上半身を起こしてくるに従いハムストリングの活動は小さくなり、

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体が真っ直ぐ(股関節が中間位・伸展位)ではハムストリングの働きは最も小さくなります。

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スプリント動作を例に考えてみると、ハムストリングは遊脚中期〜後期〜接地〜接地期(立脚期)初期で活動が高まります。

 

股関節の動きで言えば股関節屈曲位→股関節中間位・伸展位となりルーマニアンデッドリフトの動きと同様です。

 

しかし股関節の動きは同様でも力の発揮するタイミングは異なり、スプリントにおいては接地の直前〜接地〜接地期初期のタイミングでもハムストリングの活動は高い状態です。

www.jstage.jst.go.jp

 

 

股関節中間位付近でハムストリングを強く働かせるのはルーマニアンデッドリフトでは難しく、この位置でのハムストリングの活動を強化するには別のエクササイズが必要です。

 

 

股関節中間位・伸展位でハムストリングを働かせる

クイックリフトの一種であるクリーンやスナッチといったエクササイズでは、バーベルを力強くあげるために上方へ向かって加速し続ける必要があることから、より股関節を中間位に近い位置まで働かせることができます。

 

また特にハムストリングの強化を狙う場合には、背筋台やローマンチェアーを使用した以下のエクササイズがお勧めです。(2分17秒〜)

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このエクササイズではハムストリング〜大殿筋〜背筋群をリンクさせながら、ハムストリングを股関節中間位付近で働かせることができます。

また、スプリントなどの高強度運動では、ハムストリングはエキセントリック収縮をするもののその活動はアイソメトリック収縮にも近いもの(ノルディックハムストリングやルーマニアンデッドリフトのようにゆっくり大きく伸ばされるわけではない)ことから、その感覚や力発揮を学習しながらハムストリングを強化するにも効果的です。

 

背筋台やローマンチェアーがない場合には以下のような片足ブリッジエクササイズでも同様なトレーニングができます。

この場合にも膝関節の角度を浅くして、股関節を中間位〜軽度屈曲程度の位置で行うのがいいでしょう。

 

 

ハムストリングは二関節筋であることから膝関節と股関節の両方の角度の影響を受けます。

また動きの中で重要な局面が1つだけではないこともポイントです。

 

ルーマニアンデッドリフトが悪いわけではなく、ルーマニアンデッドリフトのようなエクササイズで股関節の動きをメインにしたエキセントリックエクササイズを行いながら、それだけでは不十分な股関節中間位・伸展位付近での力発揮を高めていくことが重要だと思われます。

 

エクササイズ自体は一例ですので、ポイントを押さえながらエクササイズは工夫してみてください。

 

今回はここまでです。

ありがとうございました! 

 

 

参考

www.jstage.jst.go.jp