#2 アスリートにレッグエクステンションマシーンは必要ない?

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f:id:keidmatsu:20170625030101j:plain筋力の向上はスポーツパフォーマンスの向上に貢献するであろうことや、傷害予防につながることは研究レベル、現場レベルともに知られています。

 

しかし、ただ筋力を向上させればいいかといえばそうともいえず、例えばベンチプレスの挙上重量をひたすら追求していくことは、それ自体がサッカー選手のパフォーマンス向上に直結する可能性は低いであろうし、

また別の例をあげれば、カーフレイズでひたすら下腿三頭筋のの筋力向上・筋肥大を図ったとしても、パフォーマンスへの貢献度は低いばかりか、マイナスの効果も予想できるのではないでしょうか?

 

つまりただ筋力の向上や筋の肥大を狙うのではなく、それがどのような意図で行われているか、また意図を前提にどんな方法を取っているかは非常に重要となります。

 

 

レッグエクステンションマシーン

レッグエクステンションマシーンは、学校のトレーニングルーム、公共のジム、医療機関など様々な場所で目にするトレーニングマシーンです。

膝関節を伸展させることで、大腿四頭筋の筋力を強化することを目的に使用されます。

 

これはOKC(Open kinetic chain:開放性運動連鎖)に分類されるトレーニングエクササイズであり(OKCとCKCは後々まとめて記事にしてみます)もともと大腿四頭筋を単独で強化することを目的につくられたものです。

 

そんなレッグエクステンションマシーンですが、アスリートが利用する必要はあるのでしょうか?

 

膝関節の伸展

膝関節の伸展動作は、歩行から走動作、立ち上がり動作、ジャンプなどほぼ全ての運動で見られ、スポーツにおいてこの動作が見られないことはほぼありません。

 

サッカーやキックボクシングなどでは、蹴る、という運動中に膝関節の伸展が行われます。

 

そこから、

「膝関節の伸展筋力を向上させれば、パフォーマンス向上のつながるのではないか?」

「サッカーのシュートは膝下の振りが重要だっていうし、強化した方がいいのかな?」

と考えが出てくるのでしょう。

 

膝関節の単独運動は不自然な運動

スポーツにおける膝関節伸展運動の中で、大きな出力が求められるものをシチュエーションで分けて考えた時、2つのパターンが考えられます。

  1. スプリント、ジャンプ、ストップなど身体を移動させる運動(CKC:閉鎖性運動連鎖に当てはまる)
  2. ボールを蹴るなどのキック運動(OKC:開放性運動連鎖に当てはまる)

多くのスポーツでは1がメインとなります。

日常生活レベルでも、ですね。

立ち上がり運動でも身体を上方へ移動させるために膝関節が伸展します。

 

サッカーやフットサル、ラグビー、キックボクシングなどの競技では1に加えて、2も重要な運動となります。

 

前方移動や跳躍、減速運動時の膝関節(CKC)

身体を移動させる場合、地面からの反力をもらってその力で身体を動かすので、基本的に地面に向かって、移動方向とは逆方向に力を発揮する必要があります。

その場合膝関節の伸展は運動に大きく貢献します。

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では、1を考えた時、レッグエクステンションマシーンでの運動のように下腿を前方へ移動させるように膝関節を伸展した場合どうなるでしょうか?

 

試しによーいどんの姿勢をとりながら、下腿を前方に移動させるように膝関節を伸展してみましょう。

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前方ではなく後方へ移動してしまうことがわかるはずです。

 

ジャンプ ではどうでしょうか?

両足ジャンプを仕様とした時に、下腿を前方へ移動させるように膝関節を伸展すると、同様に後ろへ跳んでしまいます。

まあ実際にやってみればわかります。

そしてこれらの運動の不自然さも感じ取ることができると思います。

f:id:keidmatsu:20170625024830p:plain膝関節をレッグエクステンションマシーンでの運動のように働かせると、前方・上方へ移動することができません。

力を伝える方向や筋活動が異なるからです。

 

表現として、また関節の運動だけを切り取って考えた場合は、「膝関節伸展」ですがこのようなことが起きてしまいます

f:id:keidmatsu:20170625024231p:plain同じように減速運動を考えてみると、低速からの減速・ストップでは、速度が上がれば上がるほどレッグエクステンション時のような膝関節の運動では減速しきれない(いわゆる膝がつぶれる状態を引き起こす)ことを感じることができるでしょう。

 

つまり、身体を移動させる場合の膝関節伸展は、全身運動の結果起きる運動であり、それ単体で起こると、また力を伝える方向が異なると、別の運動に繋がってしまいます。

 

キック時の膝関節(OKC)

キック時の膝関節の運動を考えてみると運動の見た目や出力する方向は、レッグエクステンションマシーンの運動に似ています。

 

「じゃあ、キック強化のために行うのなら効果的だ!」

というわけにはいきません。

 

キック運動は、股関節・膝関節の運動にとどまらず、全身を使った運動です。

 

試しにボールを膝関節の伸展運動だけで蹴ってみてください。

おそらくどんなに筋力がある人でも強く蹴ることはできないでしょう。

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大腿四頭筋単独の筋力や、生み出されるパワーだけではキックへの貢献度はそれほど高くないのです。

 

そういう視点から見てみると、キック時の膝関節伸展は、それ自体で大きな力を発揮しているというよりも、全身運動や体重移動の結果、高い速度での膝関節の伸展に繋がり、ボールに大きなパワーを伝えることに貢献している、と考えるのが妥当です。

  

レッグエクステンションのような膝関節の伸展だけを切り取った運動を繰り返すことは、筋力向上は図れるかもしれませんが、キックという一連の運動の流れへ悪影響を与える可能性があるのではないでしょうか?

 

まとめ

  • 膝関節の伸展は一連の運動の結果起きる
  • 膝関節単独の伸展(OKCのような)は不自然
  • このような運動の反復は走運動やキックなど、全身運動の一連の流れ・リズムに悪影響を与える可能性がある。

レッグエクステンションを否定する理由として、ACLへのストレスや、軟骨の消耗、OKCのエクササイズであることなどをよく耳にします。

 

それもそうかもしれませんが、そもそもとしてパフォーマンス向上のために(筋力向上ではなく)実際の運動から逆算して考えると、レッグエクステンションマシーンを活用しなければならない理由がいまいち思いつきません。

これをやるくらいならレッグプレスやスクワットなどの運動の方が遥かに効果的だと感じます(もちろん目的や意図次第)。

 

もちろん、道具は使いようなので、特定の目的・意図がありそのために行なっている場合、それを否定するつもりはありません。

それが競技パフォーマンスの向上につながるのであれば継続するのも一つの選択だと思います。

 

しかし、

「キック力向上には大腿四頭筋の筋力が〜」

「ストップ動作には〜」

「レッグカールとレッグエクステンションをやってバランスよく筋力を高める~」

 

といったような理由であれば、行わない方がいいのでは、と考えています。

 

筋や関節運動からトレーニングを考えるのではなく、まずは実際の運動を、そこから何が必要なのか考えることが大切ではないでしょうか?

 

 

p.s.

念のため書いておきますが、ボディビルディングのような種目では必要だと思いますし、結局は目的次第ですね。

 

もしも

「こんな目的でレッグエクステンションを行なっている。」

「レッグエクステンションは必要。こんなメリットがある。」

等の意見があればぜひお聞きしたいので、そういう方がいましたら連絡いただきたいです。