前回導入として書きましたトレーニング負荷・強度・量・質に関してです。
#45 トレーニングの負荷と強度の違いを知ることはコンディショニングの基本となる。 - Matsu Sports Training
今回は、まずトレーニング負荷とはなんなのか、というところを簡単にまとめました。
トレーニングに関わらず、運動すると体に負担がかかります。
それをトレーニング負荷と表現することが多いですが、その定義や概念を理解しておくことは、トレーニング計画・実施をする上で非常に重要だと考えています。
ちなみに、今回は、この書籍を参考にしたのですが、2冊とも「スポーツトレーニング」を考える上で非常に参考になる書籍ですので、ぜひ読んでいただきたいと思っています。
超おすすめです。
負荷と強度の違い
まず、トレーニング負荷と強度の違いです。
「トレーニングの負荷が高い」
「トレーニングの強度が高い」
どちらも耳にする言葉ですが、その二つの言葉が意味なす現象は異なります。
トレーニング強度はトレーニング負荷の一要因で、トレーニング負荷はその他様々な要因で構成されています。
負荷を簡単に考えるときには
トレーニング負荷=トレーニング強度×トレーニング量
で示されることも多いです。
この強度と量に関しては次回以降まとめています。
トレーニング負荷とは?
トレーニング負荷は以下のように表現されます。
トレーニング負荷は身心に及ぼす作用であり、それは強度や量、複雑さや心理的な側面などの要因によって引き起こされるということです。
また、別の定義では、以下のように表現されています。
この表現では、身体に起こる変化の程度、というニュアンスが強くなりますね。
そうなると、一つ前のスライドに書いた
- 「運動によって及ぼされる所作用の総体」
- 「身体に起こる変化」
の二つの視点から、負荷を考える必要が生まれます。
外的負荷と内的負荷
ここで、外的負荷と内的負荷という考えが必要となります。
外的負荷は、身体外で定量的に示すことのできる負荷で、内的負荷は、身体内で起こる変化の大きさのことを指します。
トレーニングで考えると
外的負荷は
- 1000m走る
- シュート練習を10回行う
- 45分間サッカーをする
- スクワットで100kg挙上する
内的負荷は
- 心拍数が最大値の90%に達する
- 最大酸素摂取量(VO2Max)の170%の強度で運動する
- 血中乳酸濃度が4mmolに達する
と考えられます。
内的負荷は、外的負荷が増えると増えていきますが、
- 個人差がある
- トレーニングに慣れてしまうと外的負荷を増やしても内的負荷があまり上がらないという現象が起こる可能生がある
等に注意が必要です。
また、外的負荷は簡単に設定できますし、外から見てもわかるのでそればかりに目がいきがちですが、実際にその選手にどんな内的負荷がかかっているのかを見極めることはより重要になります。
負荷の算出はどう行う?
これはまた別記事で書こうと思いますが、例えば研究では、血中乳酸濃度を算出することが多いです。
運動強度の上昇によって乳酸の産生が高まることを利用して、その対象者がどれほどの運動強度で運動しているのか、を把握します。
これは、先日のクローズアップ現代で東京大学の八田教授が行っていたので、見た方もいるかもしれません。
“乳酸パワー”で持久力アップ! ~あなたもできるトレーニング法~ | NHK クローズアップ現代+ https://t.co/PQ13pQpTaJ
— 松本 圭介 |トレーナー (@DoKei56) 2018年10月10日
#42 「乳酸は疲労物質ではない」ことを学ぶために東京大学八田教授の著書「乳酸をどう活かすか」を読もう。 - Matsu Sports Training
しかし、この方法は、実際の現場で行うのは難しく(特に集団スポーツでは)、現場レベルで行うとすれば、
- ランニングトレーニングでの距離や時間の設定
- トレーニングの回数や強度の設定
などからおおよその外的負荷を算出し、
- 心拍数
- 主観的疲労度
などから内的負荷を算出するという方法が多く取られているかと思います。
サッカーで現在主流となっている、サッカーの競技トレーニングと、持久系トレーニングを分けずに行う(戦術トレーニングと持久系トレーニングを合わせて行う)という方法では、上記のように外的負荷や内的負荷を定量的に測定することが難しい点がネックになります。
これを解決するために、GPSを使ってトレーニング中の走行距離やスプリント回数、体に加わる衝撃を測定する、という方法が取られるようになってきています。
同時に心拍数を測定できる機器もあるので、それを使えば内的負荷も測定することができるでしょうし、先ほど触れた先日のクローズアップ現代では、乳酸値を運動したままで簡易的に測定できる機器が登場していたので、それらを使えば、内的負荷も外的負荷も測定できます。
これのネックはお金と人材で
- 機器を導入できるお金があるか
- 機器を使いこなせる or 使うための(人数的な)人材がいるか
という点で、現実的には、全てのチームや選手で活用できるわけではないですね。
なので、現実的にお金のないチームで活用できるとすれば
- 主観的疲労度
- 心拍数
をデータとして利用しながら、これはおそらく最も重要な点にの一つになると思いますが、トレーニングをみる人(コーチ、トレーニングコーチ、トレーナー etc...)が選手の動きの変化を読み取る(動きが減っている、精度が落ちている etc...)ことが必要になってくると思います。
まとめ
今回は「負荷」に関してでした。
トレーニング負荷とは?という点がわかった上で、強度と量、質を理解することが必要だと思います。
次回以降でこれらに触れていきたいと思います。
参考