スポーツの世界で生きてきた人は、サッカーは~、野球は~、テニスは~、といったようにスポーツから人の運動を考えてしまいがちです。
そうなると、例えば
「サッカーは上半身を使わないから〜」
と言われた時に、
「いやサッカーは上半身めっちゃ使うから。」
といった反論に繋がってしまいます。
先日以下のような記事が話題となりました。
なぜ日本スポーツでは間違ったフィジカル知識が蔓延するのか? 小俣よしのぶ(前編) | VICTORY
サッカー“しか”やらない子は、どうなるのか? 小俣よしのぶ(後編) | VICTORY
人の運動、という視点からとらえると、サッカーだけをしていると十分な運動体験ができないことは明白で、だからこそ、特に幼児期や児童期、あるいは育成年代と呼ばれる間に様々な運動を体験をしておくことが求められるのではないでしょうか。
基本動作
子どもの頃に習得しておきたい基本の36動作(中村 和彦:「運動神経がよくなる本」マキノ出版.2011)のように、スポーツ特異的なスキルではなく、そもそも人として重要な動作があります。
回る・ぶら下がる・逆立ちなど身体のバランスを感じるような運動、走る・止まる・くぐるのように移動を伴う運動、投げる・蹴る・打つなど道具を操作する運動などからなる基本的な動作のことです。
自分の身体を認識したり、上手く動かしたり、道具を巧みに扱ったりするために基本の動作を体験し、その感覚を養っておくことは、スポーツを行う上での前提ともいえます。
スポーツからすべてを考えてしまうと、例えばサッカーは逆立ちができなくても十分プレーできますし、腕で自分の身体を支えることも、何かに上ることも不要で、あえて行う必要はないように感じます。
サッカーではその動きをしないから、そんなことをするよりドリブルやパスの練習をした方がサッカーが上手くなる、と考えてしまいます。
しかし、後々パフォーマンス向上の障害となるのは、あるスキルを上手く行う感覚がわからない、頭では理解してるのに身体が動かない、といった自らの身体をうまく認識・操作できない、といったものではないでしょうか。
その根底には、基本的な運動の感覚や自らの身体を操作する体験の不足があるのかもしれません。
できることと、できないことと
自分の身体を動かしてみると、できることとできないこと、あるいは得意なことと不得意なことがあることに気づきます。
例えば僕は、いわゆる器械体操のような運動が苦手で、本当に体育専門学群出身か?と疑われるようなレベルでできません。
✳︎2018.8.2追記 最近練習続けてたら少しできるようになりました笑
また、バットを振る、ボールを投げるといったことも得意ではなく、バッティングセンターに行っても正直あまり楽しくないです。
しかし、例えば泳ぐことは得意ですし、そこそこですが速く走ることもできます。
サッカーはもちろんですが、卓球も特異なスポーツの一つで、その影響か、ゴール型の球技とネット型のラケット種目の球技はどれもある程度できます。
スポーツ万能と呼ばれるような、なんでもできてしまう人もいますが、ほとんどの人はこのように、「〇〇は得意だけど、△△は苦手。」ではないでしょうか。
この、運動が得意か不得意か、ということは、多くの場合まとめて「運動神経がいい、わるい」といった言葉でくくられてしまいます。
しかし、上記のようによくよく考えてみると、幼児期や学童期に多くの体験をした運動、またそれに関連するような運動は得意で、そうでないもの、苦手意識を持っていたものは今でも不得意、という単純な答えが見えてきます。
まとめ
特定のスポーツや、特定のスキルに特化して行っていくことは効率がよく、短期的に向上がみられるためそれがいいことだと考えてしまいがちです。
しかし、長期的に見て多くの様々な運動体験をし多くの運動感覚を養っておくことは、ある種目の中で、俗にいう「身体が動く選手」となることに繋がったり、競技のためのフィジカルトレーニングを行う際にもプラスの影響を与えると考えられます。
先ほども書きましたが、パフォーマンス向上の大きな障壁になるのは、動きたくても動かない自分の身体、です。
冒頭の文に戻りますが、
「サッカーは上半身をめっちゃ使う」
からこそ、サッカー以外の運動体験を多くしておくことが大切なのだ、と最近になってわかってきたような気がします。
参考
中村 和彦:「運動神経がよくなる本」マキノ出版.2011