トレーニングを行うときの姿勢として,仰向け(仰臥位),うつ伏せ(伏臥位),横向き(側臥位),四つ這い,座位,膝立ち位,立位などがあります.
これらの姿勢は,トレーニングの目的や段階によって使い分けます.
その選手の能力,課題にトレーニング種目を合わせるために,たとえ同じ筋や動作をターゲットとしていても,仰向けであったり立位であったりといった変化が起きます.
今回は立位,その中でも片脚立ちでレジスタンストレーニングについて書いていきます.
【*この記事は、過去のブログで書いた、2016年11月の記事をリライトしたものです】
- 片脚立ちでのトレーニング
- 1.下肢に十分な負荷をかけることができる.
- 2.股関節外転・外旋筋にトレーニング刺激を与えることができる
- 3.挙上重量が少なくて済むため安全性が高い(特に腰椎への負担を軽減)
- デメリット
- まとめ
片脚立ちでのトレーニング
両脚立ちと片脚立ちとのトレーニングでの違いは何でしょう?
片脚立ちで行うトレーニングのメリットとしては以下のようなものがあります.
- 下肢に十分な負荷をかけることができる.
- 股関節外転・外旋筋にトレーニング刺激を加えることができる.
- 挙上重量が少なくて済むため,安全性が高い.(特に,腰[腰椎]への負担を軽減させることができる.)
1.下肢に十分な負荷をかけることができる.
例えば,自重でスクワットをする場合,両脚で行う通常のスクワットでは,片脚にかかる負荷は,半分になってしまいます.
この時,トレーニングの選択として片脚のスクワットを行うことで,下肢に対して,より高い強度で行うことができ,筋力やパワー発揮の能力を向上させたいと考えた時により効果的なトレーニングを行えます.
また,バーベル等を利用した高強度のウェイトトレーニングでは,例えばスクワットやデッドリフト行うときに,脚筋力の限界が来る前に,体幹部の安定性が不十分であることによって,それ以上トレーニング負荷(挙上重量,または反復回数など)を高めることができない場合があります.
その時に片脚のトレーニング(片脚スクワット,フォワードランジ,リバースランジ,片脚ルーマニアンデッドリフト etc...)を行うことで,挙上重量自体は減少させながら,下肢への負荷を高く維持してトレーニングすることができます.
2.股関節外転・外旋筋にトレーニング刺激を与えることができる
片脚でのトレーニングを行うことで,股関節外転筋(主に中殿筋)や股関節外旋筋(梨状筋などの外旋六筋)へトレーニング刺激を与えることができます.
股関節外転筋(中殿筋)
股関節の外転とは,脚を横方向に開く動き(外転)を行う筋です.
片脚を浮かしながら横に開いたときに,お尻の横のくぼみの後方斜め上あたりの筋肉が収縮するのがわかると思います.
そこが股関節外転の主動筋となる中殿筋です.
運動中は,脚を横に開くときや,横方向のへ移動するときに機能します.
またもう一つ非常に重要な働きをします.
それは,逆側の骨盤を引き上げることです.
この機能に不十分な点があると,逆側の骨盤が下がってしまいます。
スポーツ動作時にこのような動きが入ると、片脚動作での不安定性や横方向の動きで十分なスピードが出せなかったりとなる可能性があります.
股関節外旋筋(外旋六筋)
股関節の外旋とは,股関節を外側に回す動きです.
立位の姿勢で身体を正面に向けたまま膝を外側に向けるような股関節の動きを指します.
この動きはスポーツ時には,膝が内側に入る動き(knee in : ニーイン)を防ぐために重要です.
前十字靭帯損傷など,膝関節の傷害の発生因子として,knee in toe out(ニーイントゥーアウト)という動きがあります.
これは膝が内側に入り,つま先が外側を向く動きなのですが,この動作は膝関節の靭帯を損傷させるリスクが高いため,防ぐ必要があります.
また,力を十分に地面に伝えづらいため,パフォーマンス向上という面からも改善しなければならない動きです.
そのために股関節が内側に入る動き(股関節内旋)を防ぐ必要があり,そのために股関節外旋のトレーニングが必要となります.
外転筋と外旋筋のトレーニング
これら外転筋(中殿筋など)や外旋筋(梨状筋などの外旋六筋)をトレーニングする際に,スクワットなどの両脚でのトレーニングでは十分にトレーニングすることができません.
なぜならこれらの筋が活発に活動するのが片脚での動作時だからです。
片脚トレーニングでは両脚でのトレーニングで刺激を与えられる筋にプラスして,中殿筋や外旋六筋といった筋への刺激を与えることができます.
また片脚トレーニングでは両脚でのトレーニングに比べ、内転筋群の動員率も高まります。
3.挙上重量が少なくて済むため安全性が高い(特に腰椎への負担を軽減)
片脚のトレーニングでは,必然的に外的な負荷を小さくする必要があります.
例えば片脚スクワットやリバースランジをバーベルを持った状態で行おうとするのであれば,その時の重量は通常のスクワットよりも軽いものとなります.
それにより過剰な外的な負荷(ここではバーベル)を軽減できるため,安全性は高まります.
特に高強度のウェイトトレーニングで問題となり得る腰(腰椎)への負担を軽減できるため,状態によっては積極的に片脚トレーニングへトレーニングを変更することが良い人もいるでしょう.
デメリット
じゃあ片脚のトレーニングだけ行っていればいいかというとそういうわけでもないでしょう.
デメリットとしては
- 左右の脚で負荷に差が出てしまう
- 体幹部のトレーニングとして強度が低くなる
- 過度に重量を上げると危険
といったことが考えられるかなと思います.
左右の脚で差が出てしまうというのは,言い換えれば左右の脚それぞれに適した負荷でトレーニングが行えているということでもあります.
しかし,一般的にアスリートは(もちろんアスリート以外もですが)競技動作によって既に筋力に左右差が生まれている可能性が高いです.
競技以外のトレーニングでも片脚のみのトレーニングを行うことで,その左右差を助長してしまう可能性があるため注意が必要です.
また,片脚のトレーニングで、体幹部の筋力によるトレーニングの制限を軽減できるということを先に書きました.
それは言い換えると,体幹部へのトレーニングとしての強度は下がる,ということでもあります.
もちろんそれでも十分なトレーニング刺激とはなりますが,目的によっては不十分である可能性もあるので考慮する必要はあるでしょう.
まとめ
片脚で行うトレーニングには両脚のトレーニングでは得られないトレーニング効果があります.
もちろん両脚で行うトレーニングにもメリットがあるため,目的にあわせて選択していく必要があるでしょう.