#27 パワートレーニングで「力」を重視するか「速度」を重視するか。

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前回、パワーに関連する記事として、

RFD(Force of deveropment)に関する記事を書きました↓

#26 一瞬のスピード、パワーを身に付けたいなら筋力だけじゃなくRFD(Rate of Force Development:力の立ち上がり率)も考えよう。 - Matsu Training Blog

 

この記事の中で、

「力の大きさは速度に依存する」ということを言いました。(詳しくはリンク先記事で。)

大きい力を出そうとすれば、速度は小さくなり、逆に小さな力であれば大きな速度をだせます。(負の関係)

 

今回はそんな「力」と「速度」、そして「パワー」について書いていきます。

 

*この記事は過去ブログhttp://www.matsu-taiiku.comで2016年10月に書いた記事を修正してリライトしたものです。

 

 

パワー=力×速度

サッカーでボールを蹴るとき、バスケットボールでジャンプするとき、ラグビーで相手とぶつかり合うとき。

これらのシチュエーションで発揮されるのは、スクワットで1RMの重量を持ち上げるときのような、単純な筋力や力ではありません。

この場合、大きな力大きな速度で発揮することが求められます。

 

この時発揮されているのがパワーで、このパワーは一般的に

パワー=力×速度

として表されます。

つまり、パワーとは発揮する力の大きさと、その速度の関係によって大きくなったり小さくなったりするのです。

 

パワーの発揮

パワーは力と速度のかね合いで発揮されると書きましたが、先に書いたようにこの2つの要素は互いにトレードオフの関係(一方が大きくなればもう一方が小さくなる)です。

 

力-速度曲線

力-速度曲線については、過去記事を参照してください↓

ページ上部のリンク記事と同じ記事です。

#26 一瞬のスピード、パワーを身に付けたいなら筋力だけじゃなくRFD(Rate of Force Development:力の立ち上がり率)も考えよう。 - Matsu Training Blog

 

また、以下のリンク先の記事で力-速度曲線についてまとめられています。

ここからは以下の記事をもとに書いていきます。

興味がある方は読んでみてください↓

Science for Sport | Force-Velocity Curve

 

力を高めるだけでいいのか?

 パワーを高めよう、と考えた時にアイデアの一つとして、このように考えることができます。

「筋力を向上させて力を大きくする。パワーは力×速度だから、力を大きくすればパワーも大きくなる。」

 と。

 

確かに筋力を高めて力を大きくすればパワーも向上します。

実際に、ウェイトトレーニングで最大筋力を高めていけばパワーの向上も起こります。

 

しかし、単純に筋力だけを高めていくことでパワーも向上する、というのには限界があります。

なぜなら、先に書いたように、力は速度に依存するからです。

大きな力が出せるようになっても、速度が伴っていなければ大きなパワーにはなりません。

 

そのため、最大筋力を向上させるトレーニングとは別に、パワー発揮のためのトレーニングを行う必要が出てきます。

 

パワートレーニング

一口にパワーといっても、パワーが力と速度という負の関係を持つ2つの要素によって成立しているため、

・力が大きく、速度が小さい場合のパワー

・最大パワー

・速度が大きく、力が小さい場合のパワー

があります。

そのため、目的に合わせてトレーニング方法も変えていく必要が出てきます。

 

5つの分類

リンク先の記事で、パワーの発揮を力と速度の関係性から大まかに5つに分類しています。

 

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1. Maximum Strength(最大筋力) 90-100%1RM

2. Strength-Speed(筋力-スピード) 80-90%1RM

3. Peak Power(ピークパワー) 30-80%1RM

4. Speed-Strength(スピード-筋力)30-60

5. Maximum-Speed(最大速度)

力の大きさは、1>2>3>4>5

速度の大きさは、5>4>3>2>1

の順です。

 

1.Maximum Strength(最大筋力)

このゾーンでは、最も大きな『力』を発揮できます。

最大筋力の発揮ができ、バックスクワットやデッドリフト、ベンチプレス等の種目で1RM90%以上の負荷で力を発揮したときはこのゾーンとなります。

 

またその他の運動でも、最大の負荷をかければこのゾーンの力を発揮することができます。

 

<負荷>

90-100%1RM

 

<エクササイズ例>

・スクワット(>90%1RM)

・デッドリフト(>90%1RM)

・ベンチプレス(>90%1RM) 

・その他エクササイズ(>90%1RM) etc...

2.Strength-Speed(筋力-スピード)

ここでのパワー発揮は、最大の力や最大のパワーを発揮できるわけではありません。

しかし、Mximum Strengthのゾーンに比べ、短い時間の中で最も大きな力を発揮することができます。

動作の速度よりも、大きな力の発揮に重点を置いたパワートレーニングゾーンです。

先に書いた、「力』が大きく、『速度』が小さい場合のパワー」はこれに当たります。

重いものを遠くまで飛ばしたり、相手とぶつかり合ったりなど、大きな速度が出ない状況でのパワー発揮が必要をする場合はこのゾーンでのトレーニングが必要です。

 

<負荷>

80-90%1RM

 

<エクササイズ例>

・クリーン

・スナッチ etc...

3.Peak Power(最大パワー)

このゾーンでは最も大きなパワーを発揮することができます。

力の大きさはStrength-Speedに、速度はSpeed-Strengthには劣りますが、発揮されるパワーは最大です。

最大パワーを高めたい場合にはこのゾーンでのトレーニングが必要となります。 

 

<負荷>

30-80%1RM

 

<エクササイズ例>

・スクワットジャンプ

・セカンドプルからのクリーンやスナッチ etc...

4.Speed-Strength(スピード-筋力)

Strength-Speed(筋力-スピード)と同じように、最大の速度やパワーは発揮できません。

しかし、大きな速度で力を発揮することができます。

速度に重点をおいたパワートレーニングです。

速度が大きく、力が小さい場合のパワーのゾーンといえます。

野球のバッドスイングや、サッカーでの高いジャンプ、方向転換動作など、大きな速度を出しつつパワーを発揮する状況は、このゾーンが当てはまります。

 

<負荷>

30-60%1RM

 

<エクササイズ例>

・遅いSSC(ストレッチ・ショートニング・サイクル)でのプライオメトリクストレーニング(垂直跳び、片脚でのハードルジャンプなど)

・軽い負荷でのスクワットジャンプ etc...

5.Maximum Velocity(最大速度)

このゾーンでは最も大きな速度で運動を行うことができます。

100mのスプリントや、ホッピングやバウンディングなどのプライオメトリクストレーニングはこのゾーンの運動です。

またスプリントにおけるアシステッドトレーニングなどは100%以上の速度を出すことができます。

それもこのゾーンの運動です。

 

<負荷>

<30%1RM

 

<エクササイズ例>

・短距離走などのスプリント

・アシステッドスプリント

・速いSSCでのプライオメトリクストレーニング(ホッピング、バウンディング、ドロップジャンプなど) etc...

 

目的に合わせたトレレーニング選択

大きなパワーを発揮するのに、力と速度を高めるのはもちろんですが、競技種目やポジション、自分の特徴に応じて必要なパワー発揮のゾーンは変わってきます。

 

ラグビー、柔道、陸上の砲丸投げなどの種目ではMaximum StrenguthやStrength-Speedのソーンでのパワー発揮の重要度が高いかもしれません。

対して、陸上の短距離・跳躍系の選手、バレーボールなどの競技ではSpeed-Strengthや Maximum-Speedのゾーンが、相対的に、より重要になるかもしれません。

サッカーやバスケットボールなどの多くのゴール型球技では様々なゾーンでのパワー発揮が必要となるかもしれません。

 

また、トレーニング計画の立て方によっては、

「まずはこのゾーンを向上させてから、それからこっちを~」

というようにトレーニングを選択していくこともあるかと思います。

 

目的に合わせてパワートレーニングを行うための大まかな目安として上の5ゾーンを利用できると効果的なトレーニング計画・選択に役立つのではないでしょうか。

 

まとめ

大まかな分類ですが、ただパワートレーニング、スピードトレーニングとひとまとめにするより、その特性を考えた上で選択できか否かは大きな違いになりえます。

 

例えばクリーンの重量が上がっているのにパフォーマンスの向上に繋がっていないと感じている人は、より速度の重要度が高まるMaximum Velocityでのプライオメトリクスを導入することで変化が現れる、なんて場合もあるでしょう。

逆も然りですね。

 

また、今回エクササイズの例も紹介してありますが、力と速度との関係がわかっていれば何もここに書かれているエクササイズだけが正解だとも思っていません。

このエクササイズは?こっちは?と考えるのも面白いと思います。

 

参考

Science for Sport | Force-Velocity Curve