Matsu Sports Training

体育系大学卒のPT学生。関東大学サッカーチームでトレーナー。スポーツやトレーニング、身体について書いていきたいと思います。

#21 一度脚を後ろに引いてから加速する場合にスムーズに動き出すためのポイントは?

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今回は球技スポーツにおける、スタート動作と加速局面に関して、特に初めの1,2歩目に関して書いていきます。

 

今回はいつもよりも多く(いつもも多いですが)私見ががんがん入ってますが、そう思って読んでください。

 

【過去ブログで2017年5月9日に書いた記事をリライトしました。】

 

一度脚を引いてからスタートする

スタートの際に、

 

一度脚を引いてからスタートする方法

そのまま一歩目を前に出す方法

 

との2種類があります。

静止姿勢、あるいはパワーポジションと呼ばれる準備姿勢から動き出すときには、多くの選手が、一度脚を引いてからその足で地面をプッシュしてスタートしています。これに対して、否定的な意見を持つ人もいますが、どちらが早いか検証した研究(1)では、

  • 一度脚を引いてからスタートしたほうが速い

という結果が出ています。

 

また同研究から、①と、③あらかじめ脚を前後に開いた状態からスタートする を比較した際には

  • あらかじめ脚を前後に開いた姿勢からスタートする

方が速いという結果になっています。

 

もちろん実験設定や、その選手の動作技術にもよると思いますが、この結果から

③ > ① > ②

の順に速いスタートであると言えます。

 

後ろの脚と前の脚

現状、②のスタート方法にはメリットがなさそうなので(もちろんそれに対する技術を否定するつもりはないです。そこに特化して取り組んでいる選手もいると思うので。)

まず、

  • あらかじめ前後に脚を開いた姿勢でのスタート

を考えます。いわゆるスタンディングスタートと呼ばれるやつですね

 

この場合、前方に動き出す瞬間には足が前後に開かれているため、前方の脚後方の脚が生まれます。

前提条件として、大きな力を発揮できるのは前方の脚です。

後方の脚は方向を変えたり、動きだしのきかっけを与えるのには向いていますが、すでに関節が伸展位にあるため大きな力を発揮するには不向きです。

 

人が移動する際には、地面反力重力の二つの力をうまく活用していますが、スタート時も同じことが言えます。

前方の脚で適切な方向へ、大きな力を発揮しながら、重力の力を利用すること(前に転びそうになる力)が効果的なスタートには求められます。

それを踏まえた上でスタンディングスタートを考えると、後方の脚で強く地面を蹴ってしまうのではなく、いかに前方の脚で地面をプッシュできるかが重要であるかわかるかと思います。

 

球技スポーツでのスタート・加速局面

さて、ここまではあらかじめ移動方向が決まり、姿勢がつくられた状態でのスタートでした。

しかし、サッカーを含む多くの球技系スポーツでは、周囲の状況に合わせて適切なタイミングに適切な方向へ動き出すことが求められます。

 

ここで先ほどの、

「一度脚を引いてからスタート」

が出てきます。

後ろに脚を引いて、といっても意識の違いによって動作に違いが出てきます。

 

今回は、

  • 引いた脚で地面を強く蹴ってスタートする(A)
  • 引いた脚でスタートするが、その後素早く逆脚をついてスタートする(B)

という二種類を考えてみます。(右足が黄色、左足が赤、どちらも左足を引いてからスタートしています。)

 

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先ほど書いたように、大きな力を発揮できるのは前方の脚です。

ということは、後ろに引いた脚は大きな力を発揮するのに適していません。

 

しかし、サッカー選手の多くに、後ろに引いた脚で地面を強くプッシュして動き出そうとする動作がみられます(上の図と下の図のA)。

一見、後ろに引いた反動を使いながら、爆発的な一歩を踏んだ方が速く動けるように感じます。

しかし、その弊害として

  • スタートしてから前方の脚が接地するまでの時間が長くなる
  • 加速のための適切な姿勢が作りづらい

ということがあげられます。

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加速局面では前傾姿勢をつくることが必要ですが、後ろの脚で強く前方へ出ようとすると、上半身がのけぞってしまう原因ともなりえます。

これによって二歩目以降の姿勢が崩れ、爆発的な加速が実行できなくなりやすいです。 

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次に二歩目を考えてみます。

AとBにおいて、二歩目を設置した際に起きる違いとして

  • ポジティブシンアングルの角度
  • 上半身の前傾角度
  • 接地位置(重心の前か後ろか)

が考えられます。

Bでは、一歩目を踏んだ時点で二歩目のための準備ができているため、前に転がろうとする力と、後ろ脚からの反力をきっかけとして前方の脚を接地することができます。

適切なポジティブシンアングル、上半身の前傾角度や減速成分が可能な限り少ない位置への接地は、加速局面において水平速度を生み出すのに重要な要素となります。

 

しかし、Aのように、後ろ足で強く蹴りだそうとすると二歩目の時点でその姿勢がとりにくくなります。

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最後に、二歩目で出力し、爆発的な加速が始まる局面を考えてみます。

水平方向の力を高めることが、効率の良い加速に必要ですが、先述したポジティブシンアングルや上半身の角度等が適切でなければ、力が分散してしまいます。

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加速時のトリプルエクステンションは陸上競技だけの話でなく、サッカーでもみられる動作です。

 

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加速時のテクニックにはそのほかに以下のようなものがあげられます。

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(出典:(2)若井正樹.Strength & Conditioning for Rugby ‐フィールドで戦うために‐,Strength & Conditioning, 14(8), 47-53, 2007.) 

 

加速の1,2歩目は...

まとめると、加速局面の最初の1,2歩目は、いかに2歩目(前方の脚)を最適な位置に設置できるか、またポジティブシンアングルを始めとした上記のポジションが作れるかが重要となってきます。

 

つまり後ろに引いた脚は、

スタート姿勢を作るために使う

ことが、より速く動くためのポイントではないかと思っています。

 

一歩で加速する。

という表現がよく用いられますが、それは、後ろ脚でスタートしてしまう動作を引き起こす言葉ではないでしょうか。

二歩目で加速する。

という言葉でで、前方の脚で加速するイメージを持ってもらいたいです。

 

まとめ

今回は、球技系スポーツの加速局面の一歩目と二歩目に関して書きました。

 

実際には、この後の三歩目四歩目を効果的に踏めるか、さらには減速や方向転換を想定しながら動けるかということが求められます。

 

また、多くのスポーツは、前方向だけでなく横方向を含む多方向へ移動しなければなりません。

そしてこの横方向へ移動する際も、2歩目をいかに出すか、前方の脚でプッシュするかが重要となります。

 

1度脚を引く動作に関して、「居つく」「踏ん張る」として否定的な見解を持つ方もいらっしゃり、「どっちが正しいの?」と困惑する方も多いと思います。

見た目は同じように見えても、起きている現象は違う、ということも考えられますので、そな当たりも踏まえて考えると面白いかもしれませんね。

 

参考

  1. Frost et al. Stepping backward can improve sprint performance over short distances. J Strength Cond Res. 22(3): 918-22, 2008.)
  2. 若井正樹.Strength & Conditioning for Rugby ‐フィールドで戦うために‐,Strength & Conditioning, 14(8), 47-53, 2007.