ラットプルダウンや懸垂、マシンやダンベル、バーベルを使ったローイング系エクササイズは、背部の筋、主に背部の筋力向上を目的に行われます。
背部には多くの筋がありますが、この場合、使いたい、負荷をかけたい筋は広背筋です。
しかし、その広背筋の働きを知らないことで、肩甲骨を動かすことや、脇の下あたりの筋を使ってる感覚でエクササイズに取り組んでいる選手も少なくありません。
ということで、今回は、広背筋に関して書いていきます。
広背筋の働き
広背筋は、骨盤から上腕骨までをつないでいる筋です。
人体で最大の筋であり、思っていたよりも大きな筋であることに驚く人もいるでしょう。
この広背筋の働きは、
- 肩関節の伸展(上腕骨を後方に引く)
- 骨盤の前傾
の二つが主なものです。
つまり、何かを引く動作や、姿勢を保持する際に作用するということです。
肩甲骨を動かす・固定する
背中のエクササイズで、多くの方は、肩甲骨を動かすことを指導されたこと、あるいは意識している人は多いと思います。
懸垂やラットプルダウンのようなエクササイズでは動かすこと、ベントオーバーローのような種目では、固定することが求められます。
肩甲骨を動かすことに関してですが、肩甲骨は
- 内転(内側に寄せる)
- 外転(外側に開く)
- 挙上(上方へ動かす)
- 下制(下方へ動かす)
- 上方回旋(内側に、回りながら挙上する)
- 下方回旋(外側に回りながら下制する)
という6方向の動きが可能となっています(立甲と呼ばれる動きもありますが今回は割愛します)。
この肩甲骨を動かす際に作用する筋は
- 僧帽筋
- 菱形筋(大菱形筋、小菱形筋)
- 肩甲挙筋
- 前鋸筋
- 小胸筋
などが挙げられます。
ここで注意したいのは、広背筋は、肩甲骨を動かすことには貢献していない、ということです。
肩甲骨の動きと広背筋の関係は。。。
ではなぜ、肩甲骨を動かすことに対して、あるいは固定することが言われるかというと、肩甲骨の動きに伴って腕(上腕骨)が動くからです。
例えば、腕を横に挙げる動作(外転)は、肩甲骨が動くことによって、90度以上まで行うことが可能になります。
肩甲上腕リズムと呼ばれる仕組みが働くからです。
同様に、腕を後方に引く動作(伸展)も、肩甲骨の内転や下方回旋が共同して起こることによって、より大きな可動域を獲得することが可能となります。
つまり、広背筋を働かせたい場合は、肩甲骨を動かす・固定することはそれ自体が目的ではなく、
「広背筋を最大収縮・最大伸長させるために上腕の可動性を高めること」
が目的であると言えます。
懸垂やラットプルダウンで、肩甲骨を意識して、大きく動かしていたとしても、それは菱形筋、僧帽筋といった筋にフォーカスしているしているに過ぎず、腕(肘)後方に引くことをおろそかにしていては、広背筋の働きは小さなものとなってしまいます。
つまり、まとめると、
「広背筋を働かせたければ肘を引け」
ということです。
腕を引くこと
感覚としては、腕を引くというよりも、肘を引くイメージがいいでしょう。
また、肩関節の伸展には、広背筋以外にも
- 三角筋後部
- 上腕三頭筋(長頭)
- 大円筋
といった筋が働きます。
骨盤が後傾してしまっていたり、広背筋が働く感覚がわからなかったりすると、三角筋や大円筋ばかり使っているような感覚を感じることがあります。
特に、無理に高重量によるトレーニングを行おうとしたり、そもそも広背筋を理解していない場合に起こりやすいです。
その場合は、
- 骨盤の前傾ができているか、後傾していないか。
- 肘を引き切れているか。
- 懸垂では後ろで足を組んでみる。
などを改善してみるとを、解決することもあるかもしれません。
まとめ
今回は、肩甲骨と広背筋に関してでした。
肩甲骨を動かす、ということはよく言われますが、肩甲骨を動かすのはそれ自体が目的というよりも、腕を大きく動かすことや、肩関節の負担を軽減することなどが目的とも言えます。
例えば、いくら肩甲骨を動かして、あるいは固定していても、肩関節の伸展が不十分であれば、広背筋の働きは小さなものとなってしまいます。
そのあたりに気を払って行ってみると、違いを実感できるはずです。
サッカーでは、相手を腕でブロックしたり、姿勢を保持したりといった際に重要な働きをする筋です。
ベンチプレスや腹筋ばかりガンガンやっている選手が多いと思いますが、そんな選手は懸垂をしましょう。
ベンチプレスは100㎏、でも懸垂は1回しかできない、なんて選手は実際にいるのです。