#9 ヒップヒンジはあくまでトレーニングのための動作であり、競技スキルではない。

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ヒップヒンジには、股関節を蝶番(ヒンジ)のように動かす動作です。

詳しくは、この記事この記事をみてみてください。

 

これらの記事で「ヒップヒンジは重要だ」と書いています。

これらの記事は閲覧数の多い記事であり、興味を持つ人が多いのかなと感じています。

 

しかしこれは、

「ヒップヒンジを競技中に行えばパフォーマンスが向上する」という意味ではありません。

競技中に行うとむしろパフォーマンスは低下してしまう可能性があります。

 

 

フィジカルトレーニングのための動作

あくまで、ヒップヒンジは、トレーニングのための動作です。

 

実際の競技パフォーマンスでヒップヒンジを行う選手はまずいないでしょう。

何故なら、ヒップヒンジをすることの弊害として、

  • 脊柱が固定されてしまうこと。
  • 全身の連動が生み出しにくくなること。
  • 大きな力が発揮しづらくなること。

などが挙げられるからです。

 

ヒップヒンジの動作では、脊柱を固定し、その状態で股関節を屈曲伸展します。

これで股関節の動きを強調できるわけです。

 

しかし、この状態でジャンプしたり、他の人と押し合ってみたりすると分かりますが、ヒップヒンジをしていない場合と比較して、殿筋の活動は強く感じますが、大きな力を発揮することができません。

また、バレーボール選手やバスケットボール選手のジャンプ、陸上選手短距離選手のスタートなど見てみるとヒップヒンジはしていないこと分かります。

 

もちろんこの競技だけでなく、この動作を行うシチュエーションをはほぼありません。

 

ヒップヒンジをすることで、相対的に股関節の伸展筋(大殿筋、ハムストリングなど)の貢献度を高めることができますが、それが大きな力の発揮や、自然な運動連鎖に繋がるわけではないのです。

 

スクワットやデッドリフトを行う際にも、重量の挙上だけを考えるならば、脊柱を湾曲させたほうが重い重量を挙上できることもあります。

 

では必要ないか?

「実際の競技動作で行われないのであれば、こんな動作をわざわざする必要はないじゃないか。」

 

と考える人もいると思いますが、現時点では、僕はそれでも必要だ(選手による)と考えています。

 

理由はいくつかありますが、

  • ウェイトトレーニングなど、高強度のフィジカルトレーニングの効果・安全性を確保するために必要であること。
  • 身体後面の筋群(ポステリオールチェイン)の感覚や、股関節を分離させた動作の感覚をつかんでいない選手に対して効果的であること。

といった理由が大きいです。

 

ウェイトトレーニングではヒップヒンジができることは必須条件で、これができていないと、スクワット、デッドリフト、クイックリフト系のエクササイズを安全に効果的に行うことができません。

 

何故なら、脊柱(特に腰椎)へ過剰な負荷がかかり傷害へつながる可能性が高くなり、また、大臀筋など本来筋力を向上させたい筋に効果的な負荷をかけることができなくなるからです。

 

また、身体後面の筋(殿筋や背筋)や股関節の動作の感覚をつかむため、という理由ですが、最初からこの感覚をつかんでいる選手はあえてヒップヒンジを行う必要はないでしょう。

 

しかし、例えばジャンプや減速動作で膝関節の運動がメインになってしまっている選手や、背筋や殿筋の活動を意識できない選手に対しては、効果的な介入方法の一つではないかと考えています。

 

まとめ

過去の記事にも書きましたが、ヒップヒンジは基礎の基礎にすぎず、これができたからパフォーマンスが向上するといったものではありません。

 

実際に競技中は、厳密にはこのような動作はほとんど見られませんし、むしろ骨盤の後傾や脊柱の湾曲は高いパフォーマンスを発揮するために必要です。

競技中にヒップヒンジしろ、というのはナンセンスです。

垂直跳びでさえ高く飛ぼうとしたらヒップヒンジは起きていないはずです。

 

しかし、質の高いフィジカルトレーニング、競技練習を行っていくうえで必要な動作の一つではあるので、必要に応じて活用していくメリットは十分にあるのではないでしょうか。

これだけで終わらず、どうやって実際のパフォーマンスに繋げるかが大切ですが。