Matsu Training Room

体育系大学卒のPT学生。スポーツやトレーニング、身体について書いていきたいと思います。

#8 ストレッチ・ショートニング・サイクル(伸長-短縮サイクル)とプライオメトリクストレーニング。

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人が運動する際、ほぼ全ての運動でストレッチ・ショートニング・サイクル(SSC:Stretch shortening Cycle)という仕組みが働き、 この仕組みにより、人は効率よく大きな力を発揮することができます。

 

この仕組みを用いたトレーニング方法がプライオメトリクストレーニングで、ウェイトトレーニングでは向上させるのが難しい瞬間的な爆発的パワーを向上させるために行われます。

 

今回はこの二つを簡単にまとめました。

 

 

ストレッチ・ショートニング・サイクルとプライオメトリクス

SSC

ストレッチ・ショートニング・サイクル(SSC:Stretch Shortning Cycle)あるいは伸長-短縮サイクルは、エキセントリック(遠心性)な筋収縮から素早くコンセントリック(求心性)収縮へ切り替えて力を発揮する運動で、通常のコンセントリック収縮よりも大きな力を効率よく発揮できる仕組みです。

 

SSCが通常のコンセントリックな力発揮よりも大きな力を発揮できる要因として、

  • 伸張反射の活用
  • 予備伸長により筋線維束が長くなる
  • 腱などの結合組織と筋に弾性エネルギーを貯蔵・再利用
  • 関節モーメントの増大  etc...

といった要因が考えられています。

 

有名な例は、「カウンタームーブメントジャンプ(反動をつけたジャンプ)の方がスクワットジャンプ(スクワットの姿勢から跳ぶジャンプ)よりも高く跳べる」というやつですね(しかしこれに関して、カウンタームーブメントジャンプのほうが高く跳べる要因は関節モーメントの増大が主なもので、他の要因は補助的なものにすぎない、とする研究もあります。Bobbert et al. 1996.)。 

 

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別の例を挙げると、連続でジャンプした時や走っているときに感じられるばねのような感覚はSSCによって力を発揮しているためだ、といえます。

 

このように書くと、SSCは素早いく力強い運動でのみ活用されるように感じるかもしれませんが、通常の歩行など、ほぼすべての動作で活用される体の仕組みです。

 

プライオメトリクス

プライオメトリクスは、上記のSSCを活用して瞬間的な爆発的パワーを向上させるために行われるトレーニング方法です。

 

身体にはゴルジ腱反射という、過剰な筋活動を抑制する反射がありますが、プライオメトリクストレーニングの目的の一つとして、そのゴルジ腱反射を抑制すること、が挙げられます。

ゴルジ腱反射は筋肉の損傷を防ぐために必要な反射ですが、より高いパフォーマンス獲得のために抑制することが求められるのです。

 

つまり、プライオメトリクストレーニングは、

上記にあげたSSCの諸要因を活用しつつ、ゴルジ腱反射を抑制することで、爆発的パワーを獲得すること

を目的に行われると言えます。

 

ドロップジャンプやバウンディングなどが有名なプライオメトリクスエクササイズです。

(動画はトップレベルの高跳び選手のトレーニング。多数のプライオメトリクスエクササイズを見ることができます。)

www.youtube.com

動画からわかるように、自体重や位置エネルギー(高さ)、軽い重量物を負荷として利用して行います。

高すぎる台を用いたり、過度の重量物を使用することは、目的とする運動が崩れてしまうことや、高い速度を発揮できないことからプライオメトリクスでは適切ではありません。

 

鉛直方向へのジャンプ運動によって行われることが多いですが、目的に応じて垂直方向のエクササイズを多く行ったり(バウンディング、ホッピングなど)、横方向への力発揮を含むエクササイズを導入するなど、競技特性に合わせて創意工夫することが必要です。

 

素早い切り替えが求められる 

SSCを活用するためには、エキセントリックな局面からコンセントリックな局面を素早く切り替える必要があります。

接地時間を短くする動作を素早く行う、と言い換えることもできます。

 

カウンタームーブメントジャンプの例でいうと、例え反動をつけたとしても、しゃがみ切ってから飛び上がるまでに1秒や2秒もかけていてはSSCを効果的に活用することはできません。

バウンディングやドロップジャンプの接地局面でも同様です。

 

爆発的パワーの獲得のために、この切り替えの局面を可能な限り速く行うことが必要です。

  

まとめ 

ストレッチ・ショートニング・サイクルという言葉や、プライオメトリクスは一般化されているとはいいがたい言葉ですが、アスリートのトレーニングに欠かせない要素の一つです。

 

 

もちろん言葉を知らないだけで行っている選手もいるでしょう。

しかしその場合、見た目は同じエクササイズかもしれませんが、最大努力で行っていないなど、質的な面で不十分であることが多々あります。

 

ウェイトトレーニングだけでは向上させることが難しい能力を向上させるためにぜひ取り入れてみてください。

 

 

参考書籍

1, Jay Hoffman(福林 徹 監訳):スポーツ生理学から見たスポーツトレーニング. 大修館書店. 2011.

2, James C.Radcliffe, Robert C.Farentinos(長谷川 裕 訳):爆発的パワー養成 プライオメトリクス. 大修館書店. 2004.

3, Steven J. Fleck, Wikkian J. Kraemer(長谷川 裕 訳):レジスタンストレーニングのプログラムデザイン. ブックハウスHD. 2007.